Basicコンサルティング 人事制度/人材育成
制度や仕組みは何の為にあるのか?
唯一正しい制度や仕組があるわけではなく、その会社独自の制度を構築すればよいのですが、根本は社員の幸せを目指すものであるべきだと思っています。
では、幸せとは何か?
慶應義塾大学大学院 前野教授の「幸福学」によれば、幸せとは金や物などのように他人と比較して得られる一瞬のものではなく、心や健康など他人とは関係なく得らずっと継続するものと定義されています。
また、これを満たせば幸せを感じられる因子を4つ上げています。
1.自己実現と成長の因子
2.つながりと感謝の因子
3.前向きと楽観の因子
4.独立と自分らしさの因子
この4つがバランス良く満たされている人は、生産性も創造性も高いと言われています。
これは個人の感じる幸せの話ですが、前野教授はホワイト企業対象を受賞している企業のアンケート結果を基に組織の幸福度を図りその因子を分析しています。その内容は以下の3点です。
1.「いきいき」因子
今の仕事や会社で働こと自体に喜びや楽しみを感じている、直接的な働きがいに関連する因子
2.「のびのび」因子
互いを尊重しあう自由闊達な社風の中でのびのびと仕事ができているかを表す因子
3.「すくすく」因子
自分の成長をどれだけ実感できているかを表す因子
首尾一貫した制度や仕組みを考える際に中核に置きたい価値観です。
Ⅰ.人事制度の構築
「人事制度を変えて業績向上」とPRをするコンサルティング会社がありますが、これはありえません。
短期的に成果を出すのであれば、戦略ややり方を変えるほうが成果は出ます。
また、個人への成果を重視するのであれば、個人主義や疲弊感というしっぺ返しを食います。
利益が右肩上がりなら誰にでも高い給与を支払うことができます。
そうでなければ、誰かに高い給与を支払うということは誰かには低い給与を払うということになります。
それが人事制度の目的かと言われると疑問です。
基本的には、自己成長の指針となるもの、会社としての期待を示すものであり、更に今後は多様な働き方を制度化するものだと思っています。
成功する人事制度8つのポイント
- 何のために人事制度を作るのか?
若手定着のために若手の給料を上げたい(逆に言えば古手の給与を抑えたい)、育成の為に目標を作りたい等何のために人事制度を作るのかを明確にすることがスタートです。
ただ、年収を上げたいのであれば、利益を上げることが最優先。 - 上げ潮のときに人事制度を作る
業績が悪いときに人事制度を変更するとマイナスのイメージが付きますので、失敗しやすいです。
上げ潮で上手く会社が行っているときに、人事制度を導入した方が皆プラスになると思いますので成功しやすいです。 - スピードかモチベーションか?
早く作りたいというのであれば、トップ層が集まって作成すれば、4~5回の打合せで人事制度はできます。
社員のモチベーションを上げたいというのであれば、プロジェクト方式が良いですね。
なぜなら、人は自分が参加したものには熱心になれますので・・・。
ただし、打合せ回数は倍はかかります。 - 結局経営計画や経営方針は必要となる
目標管理制度を導入するのであれば、その前提となる経営方針や経営計画は必ず必要になります。
すべて連動していることを認識することが必要です。 - シンプルに作る
大企業では組合への説明も必要ですし、論理的かつ精緻に作ります。
でも中小企業は、わかり易くないと浸透しません。
シンプルが一番です。 - 運用に力を入れる
制度を作るよりも運用するほうが難しいです。
制度構築後、実際に運用するのは現場のマネージャーですが、彼らがきちんと制度を理解し部下が理解・納得するようなフィードバックができるだろうか?
人事専門のコンサルタントや最近流行りのクラウド型サービスを提供しているところも、目標管理制度は作れますが目標として何を持つべきかまではサポートしてくれるだろうか?
この2点が上手く運用されない要因です。
特に重要なのは、マネージャーのフィードバックです。
これがないことが、人事制度への不信感を高めます。 - 会社業績と自分の仕事が繋がっていることを理解させる
特にマネージャーには、自分の目標が会社のどの勘定科目と連動し、会社業績にどのような影響を与えているのかを理解させることが必要です。
つまり、自分の目標を達成したら会社の損益計算書のどの数値が良くなり利益を増やし、その結果自分にどのようなメリットが生じるのかがわかることです。 - 多様な働きに対応する
働き方改革・コロナショック後の新しい働き方に対応できる人事制度を考えておく事も必要です。
短期雇用・成果報酬など個々の働き方に合わせた多様な制度設計を考えることです。
Ⅱ.人材育成及び研修
一番人が育つのは、自分で考えて自分で工夫して学ぶことです。
また、働き方改革に逆行しますが、一度くらいとことん仕事して自分の枠を壊すのも若いときに必要だと思っています。
まあ、でも時代は変わりましたので・・・。
研修には、仕事のやり方を教える研修と人としてのあり方を問う研修と知識習得を目的とする研修の2つがあると思っています。
仕事のやり方とは営業で言えば商品知識や売り方の研修のことです。基本はHowです。
人としてのあり方とは考え方や組織での振る舞いについて感じ取る・気づかせる研修です。教えるではありません。
知識習得とは、財務やマーケティング等の知識について学ぶ研修です。
基本知識習得は、自分で本を読んで勉強するか、eラーニングで十分だと思っています。
仕事のやり方研修はどの企業でも行いますが、人としてのあり方研修はおざなりになりがちです。
短期的に成果が出るものには誰でも力を入れるものです。
知識習得型研修は、大企業が好んで行います。
仕事のやり方研修系
- 定形作業は動画マニュアル化
定型的業務は、人が教えるよりも「動画マニュアル」で見て覚えるのがベストです。
ただ、問題になるのは次の場合です。
(1)作業が標準化されていない。教えてもらう先輩によってやり方が異なる。
中小企業では、よく聞く話です。
この場合は、作業の標準化が先です。標準後に動画マニュアル化です。
(2)定型的作業だがノウハウが必要。
この場合は、ノウハウの形式知化が必要です。
ベテラン社員にヒアリングを行い、言語化します。 - 3年単位の教育体系を構築する
定型的な業務は、3年で一人前になると思っています。
また、教育体系を構築することが、新卒の採用にも有利に働きます。
従って、何をどのような方法で習得するのか、習得の評価基準を作成した上で誰が教え誰が評価するのかを体系化します。
人としてのあり方研修ー主には階層別研修
- 新入社員研修
新入社員研修で学ばせることは、躾・周囲との関わり・創造性の3つだと思っています。
礼儀作法や社会人と学生の違いなどを単に教えるだけなら最も楽で簡単な研修です。
本当に深く考えさそうとすると、学生のときに正解がないことを深く考える経験がないので最も難しい研修となります。
個人的には、入社時にはビジネスマナーだけ教え、入社半年後にしっかりとしたフォロー研修を行ったほうが効果的だと思っています。
なぜなら、経験する前に言葉で教えるよりも、職場に配属されて身を持って体験したほうがよくわかるからです。
また、入社半年くらいで現実と理想のギャップに悩みます。
悩みの認識・職場からの期待・明日への期待を考えるのが、フォロー研修です。 - 管理者研修
管理者になるくらいですから、優秀でやる気が高い人が多いので実は一番やりやすい研修です。
問題は、管理者の選抜のほうですね。
担当者として優秀なことと管理者として優秀なことは異なります。
管理者前にヒューマン・アセスメントで、適正を見極めて最適な人を管理者に上げたほうが良いです。
一番簡単なのは、同僚に誰の下で働きたいかと聞くことです。
一番働きたいと言われた方を管理者にすることが正解ですし、その方を教育したほうが効果的だと思います。
その際のテーマは、人との関わりと問題解決力の2点で、一人ひとりの特徴を明確にした上での個別指導が基本です。
更に望むのは、人間性と社会観の2点です。
人間性で求めるのは、私欲がないこと 言い換えたら使命感を持っていることです。
これは健全な組織風土醸成の基になります。
社会観とは、今後どのような社会になるのかという自分なりの未来像・価値観です。
これは、課題形成に繋がります。 - 上位管理者研修
管理者研修で記載しましたように、人間性と社会観は不可欠です。
ミンツバーグが言っているように、サイエンス(分析)とクラフト(経験)とアート(直感)が必要だと思います。
多様な経験と修羅場体験が必要ですね。
同じ仲間の中だけで生きていても幅は広がりません。
それと修羅場体験。赤字会社で資金繰りをさせるとか・・・。 - 中堅社員研修(何故か最後ですが・・・)
中堅社員の中には、優秀な人/そうでない人/やる気がある人/やる気がない人など様々な方がいます。
それを同じように研修をするのかと言うと疑問は残ります。
個人的には、35歳でそれぞれの将来像は見えると思っています。
できる人は早くから経験させ、選抜研修で鍛えることが必要です。
これは、大企業より中小企業の方がやりやすいと思っています。
それ以外の方はどうするか?
役職が上がるだけが処遇ではない多様な人事制度で役割を決めていくことになります。